東京高等裁判所 昭和35年(ラ)540号 決定
本件記録によれば、原決定は、債務者である抗告人に対して債権者平井良平が占有している東京都豊島区駒込一丁目百三十四番地所在、鉄筋コンクリート造三階建店舖(床面積二十坪)のうち二階の南側着換室とこれに隣接する部分との境にある通風口を遮蔽しているトタン板その他一切の遮蔽物をその東端より一尺五寸から三尺五寸に至る二尺幅の部分を仮処分決定送達の日の翌日までに除去すべきことを命じた仮処分決定の執行として、民事訴訟法第七百三十三条第一項民法第四百十四条第二項に基いてなされたものであることが明らかである。抗告人は抗告理由一として上記建物については既に抗告人の申請によつて昭和二十五年六月一日豊島簡易裁判所が発した仮処分決定が執行されていると主張するのであるが、抗告人提出の不動産仮処分命令申請写(記録第四〇丁)公示書写(記録第四四丁)によれば、抗告人主張の仮処分決定は同事件の債務者である平井良平に対して上記建物中の二階約二坪半の部分に対する立入を禁止し、且つ抗告人が右部分を使用並びに占有することを妨害してはならないという趣旨の単純な不作為を命じたものであることがうかがえるから、この仮処分決定と上記仮処分決定はなんらていしよくするものでなく、従つて抗告人主張の仮処分決定の存在することは上記仮処分決定の執行としてなされた原決定を違法とするものではない。次に抗告理由二ないし六で主張する事由はいずれも本件の債務名義である仮処分決定が不当であるというに外ならないところ、仮処分決定の執行に準用される民事訴訟第七百三十三条第一項による執行命令は既に発せられた仮処分決定の執行方法としてなされるのであつて、基本の仮処分決定の内容に立入つてその当否を審査することはできないのであるから、これに対する抗告も単に執行方法としての手続のかしを理由とすべきであつて仮処分決定自体の不当を理由とすることは許されないものといわなければならない。してみれば抗告人主張の右事由は仮処分決定に対する攻撃事由にはなるとしても、本件抗告の適法な理由とはならない。
(村松 伊藤 杉山)